どうして・・
···父・隼人
彩羽の父・隼人は・・
奥菜先生からの報告を受け
銀行の顧問弁護士の佐野先生にも
ご心配、ご迷惑をかけた事への
お礼を伝えた。
新君は、
彩羽と我が家と池谷さんの
賠償金の支払い
式場のキャンセル料の一部だが
支払いを完了した····と。
多分かなり無理をしたと思う。
傷ついた彩羽の心は
金で解決されることはない
だけど·····
彼が金銭面だけでも
苦しんだら····と思ってしまう。
大人の男として視野の狭いと
思われるかもしれないが···
式前の一週間のあの娘が
あまりにも幸せそうで
はにかみながら母親に
料理を習う姿や
私達二人に挨拶をした娘の顔を
忘れる事が出来なかった·····
悔しくて····悲しくて····
腹立たしくて····
どうして···なにもしていない···娘が
ここまで傷つけられなければ···
ならないのか·····と
奥菜先生は、俺の考えていることが
わかったのか
「日垣さんは、間違った事は
何もしていません。
彼は、それなりの代償支払わなければ
ならないことをしたのです。
当然の報いです。
大手に勤めているのですから
本来なら、もっと引き上げて
支払わせても良かったのですが···
社内での彼の立場は
とても非常に厳しい筈です。
彼は真面目で出世の道も開かれて
いましたが、それは断たれました。
早く言えば左遷で異動となりました。
新転地でも決して居心地は良いもの
ではありません。
若い働き手の急な異動
それも僻地と言われる場所に
回りからは、何かをやらかした人間と
頭から思われてからの赴任です。
知っている人もいる筈です
人の口には戸は立てられませんから。
これからは、彼が歯を食い縛り
這い上がるか腐っていくかです。
もう、彼の支えとなる恋人も
両親もいません。
自分のせいで切れてしまったの
ですから。」
と、言われた。
先生にお礼を言うと先生は
川本さん夫婦から依頼された除籍も
完了して川本さん夫婦は
新転地で静かに暮らして行くとの事。
式にかかった費用の
彩羽が着る予定だった物の費用の
支払い返金は完了した。
・池谷さんの離婚届けの受理。
・弁護費用も池谷さんが新君の分を
支払った。
・美春さんの分は、本人が支払った。
・美春の預金・カードの凍結
も終わったこと。
・池谷さんから美春さんの分の
彩羽へ賠償の支払い完了。
**** 全ての完了 ****
先生から
「彩羽さんは、いかがですか?」
と、訊ねられたから
「仕事は、頑張って
出社しているようですが
身の振り方を考えているようです。」
と、答えると
「そうですか?」
と、先生は悲しそうな顔をした。
そんな先生に申し訳なく思い
「先生にお会いできていなかったら
苦しく辛い日々が続いていたと
思っています。
先生の奥様や佐野先生が
彩羽の為に辛いご経験を話してくれたから
彩羽も前を向く事ができました。
本当にありがとうございました。」
と、言って事務所を後にした。
先生から
「彩羽さんが
何かで悩む事がありましたら
私でも、嫁の一華でも
構いません、御連絡下さい。
と、伝えてください。」
と、言われた。
本当に感謝しかない。
彩羽は、異動願いを出しているが
どうなるやら。
妻とドイツのおばあ様の元へ
とも考えている。
おばあ様に相談してみよう
と、考えながら職場へ戻った。