どうして・・
···大賀先生
ドイツに来て10日が過ぎた。
ついたばかりの時は、
泣く事が多く
おばあちゃまや矢島さんを
心配させたり
エマの作ってくれたものも
食べれずにエマにも沢山心配をかけた。
今では、温室で
ピアノを弾いたり
本を読んだりしている。
だが、まだ、外に出る気には
ならずに、ひたすらおばあちゃまの
家の中にこもっている。
おばあちゃまも
そんな私を黙って見守っていてくれる。
ひと月を過ぎた時に
おばあちゃまから
来客があるので
一緒にどうか
と、言われて
少しなら、と答えた。
おばあちゃまのお客様を
無下にはできなかったから。
その日も
温室でピアノを弾いていたら
拍手がして
振り向くと
奥菜先生の所でみた
「大賀····先···生···?···」
「はい。はじめまして
弁護士をしております
大賀 怜と申します。」
ああ、この人が···一華さんの·····
奥菜先生が、怒っていた····
佐野先生の大切な···方だと
クスクスっ、笑っていると
「あ~っと。
それは、一華絡みの哲也さんですか?」
と、言われて
「うふっ、はい。
佐野先生の大切なご友人の怜さんですね。」
と、言うと大賀先生は、
とても切ない顔をされたから
ん?と思っていると
「当時の自分を何度張り倒したかったか。
何もしていない一華を
ただひたすら傷つけました。
佐野検事は、私の憧れ
私の尊敬するただ一人の方でした。
だからと言って
一華を利用したり
一華を傷つけて良いわけでは
決してありません。
当時の私は、佐野検事が
亡くなった全ての原因が
一華にあるが如く
父親を亡くした一華の気持ちも
わからずに·····
お前が····死ねば···良かった
と、言ったのです。
一華は、大好きな母から父を奪い
兄にも悲しい想いをさせたと
苦しんでいたのに
私の非情な言葉で
自ら命を絶ちました。
私は、一華の体の事も知らずに
また、先生の墓の前で
一華を責め立てました。
その時に
日和と哲也さんから
怒鳴られながら
一華の身体の事を知らされました。
私は、一華に取り返しのつかない
大きな心の傷
身体の傷を負わせてしまいました。」
と、悲しみに囚われた表情の
大賀先生。
大賀先生の言葉に
のどがなるほど苦しかったが
一華さんは、どれほどだったの
だろうか?
好きだった人?からの言葉に
どれだけ傷ついたのだろうか·····
「あっ、すみません。
泣かせるつもりはなかったのです。」
と、慌てて言う怜さんに
「ごめんなさい。
責めるつもりなんかないのです。
一華さんも怜さんも
奥菜先生も佐野先生も
沢山苦しい思いをされたのだ·····と
私なんか、対したことでは
ないのにいつまでもひきずって
ダメだなぁと、改めて思いました。
大賀先生、ありがとうございます。
お辛い過去を私なんかの為に。
大切な両親にも、
大好きなおばあちゃまにも
矢島さんやエマにも
心配を沢山かけてしまいました。
私も前を向いて行きます。
過去にとらわれないように。」
と、頭を下げると
大賀先生は、びっくりしたら顔を
してから優しく微笑んでくれた。