どうして・・
じゅうさん
···話し聞いてくれる?
それから10日後
律は、テア宅に現れた。
律の顔は爽やかで且つ
意思を秘めた顔をしていた。
「律、随分時間がかかったわね?
そんなに悩むなら止めておいては?
行く末、私が良い人を
彩羽に迎えます。」
と、言うと
「いえ、テア様
私に彩羽を下さい。
必ず、幸せにします。」
「ほぉ、彩羽が律に心を許すやら?」
「やってみます。必ず。」
「だが、律はクアラ・ルンプルだから
距離がある。
どうやって、彩羽の心を溶かす?」
と、テアが言うと
律は、にっこり笑って
「独立しました。飛鳥建設から
ヨーロッパの建築仲間から
オファーをもらっていたので
日本でお世話になった先輩と
一緒に独立しました。
いずれは、先輩と二人で会社を
起こつもりです。
まずは、その足固めに。
しばらくドイツに居ます。
その間に彩羽を連れ戻します。」
と、言った。
ほぉ~、たった10日間で
そうきたか·······
それなら
「律、ここに住むと良い。
三階は、沢山部屋がある。」
と、私が言うと
律は、一瞬びっくりした顔をしたが
直ぐに····
「ありがとうございます。
よろしくお願いします。」
と、言い微笑んだ。
律は、テアに頭を下げて
温室に入って行った。
温室に入ると
ピアノの音色がする
律は、そっとソファーに座った。
彩羽のピアノの音色は
昔から律の心を和ませる。
目を閉じて、耳を傾ける
音が止まると
喉がなる····音···が
律は、そっと瞳を開いて
彩羽を見て微笑み
「変わらないね
彩羽の音色は。
ありがとう、心が和んだよ。」
と、言うと
彩羽は、びっくりした顔をしたが
律は、続けて
「明日、テア様のお宅に
引っ越して来るから
宜しくね。
部屋は、彩羽の隣を使わせて
もらって良い?」
「引っ越すって?
律は、クアラ・ルンプルじゃない?」
と、言う彩羽に
「飛鳥建設を辞めてきた。」
と、言うと
「ええっ、なぜ?」
と、慌てて言う彩羽に
「前々からオファーが来ていて
先輩とそちらに移ったんだ。
いずれはその先輩と起業したいと
考えている。
住まいを探さないと行けないと
思っていたらテア様が
部屋が沢山あるからと
言ってくれたんだ。
彩羽が、俺の顔をみるのも
一緒の空気を吸うのも嫌なら
別にさがす。
テア様がせっかく言ってくれたけど
俺、彩羽にこれ以上嫌われたくない
から。」
と、言う律の言葉に
律が飛鳥建設を辞めるとは
思ってもいなかった。
あの時も飛鳥建設の仕事が
楽しくて堪らない
みたいだった。
私なんかといるより
仕事が楽しくて楽しくて
たまらないみたいだったのに
それを·····やめた·····?·····
と、考えていると
「いろ····は····?」
と、律に顔をのぞかれて
「ひやっ」
「大丈夫?」
「あっ、うん。
律は、それでよかったの?」
「ん?辞めたこと?」
と、訊かれて頷くと
「少し長くなるけど
俺の話し聞いてくれる?」
と、言う俺に彩羽は頷いてくれたから
二人でソファーに座り
俺は、クアラ・ルンプルに転勤が
決まった時から今までの事を話した。
それはテア様に話した内容より
少し詳しく。