どうして・・

···新


新は、口がきけなくなるのでは
ないかと思うほど
人と会話をしていなかった。

そんな日常を繰り返し
一年····二年····と過ぎ
三年と過ぎた時
奥菜先生から
池谷さんが再婚したことを
知らせてもらった。

奥菜先生からは
メールがたまに届く。

彩羽があの時の手紙を読んで
くれたのかは、わからない。
先生は、その事に触れてない
新もきけない

今は、彩羽との再会から
幸せだった日々を思い出して
なぜ、大事にしなかったのか
自分が情けなくて····
自分を罵ってばかりいる。

彩羽と結婚していたら
今では、子供も出来き
自分の両親と彩羽の両親に囲まれて
幸せに暮らしていただろう·····と。

だが、美春を憎んでも恨んでも
いなかった。
嘘で丸め込まれたが
それは、俺に隙があったからだ。

美しい婚約者がいて
昔の元カノに頼られて····と。
それに······流された····結果だ。

ただ····年老いて行く両親の事だけは
心配でたまらなかった·····
自分は一人っ子だから·····

そんな俺に池谷さんから
俺が支払った迷惑料の返金があった。

池谷さんは、
美春に美春のせいでどれどけの
人が傷つく事になったのかを
わからせるために
俺に支払いをさせた·····らしい。

美春に言えばきっと、俺に頼るし
変なとこに借りても不味いと
俺に負担がかかるのを
阻止するためだった
と、奥菜先生から教えてもらった。

俺は、先生にお願いして
全額を自分の両親へとお願いしたが
先生は、全額だと受け取らないだろうから
半分だけを渡してくれると
言ってくれた。

俺は、先生に雑用で負担を
かけていることを
お詫びして電話を切った。

後日、先生より
両親が受け取ってくれた事と
俺の口座に残りをいれた事を
知らせてもらった。

良かった·····と···ホッとした。
直ぐに池谷さんに
お礼の手紙を書いて送った。

俺は、会社に借りているものを
自分の預金も含めて
全て返して電力会社を退社した。

今の部署では、退社に困られたが
もう、未練も恩義も
俺の中にはなくなっていた。

北海道に来て五年が過ぎていた。

銀行の返済は多少あったが
俺は、九州の鹿児島県に行き
電力に関する仕事場に就職した。

中途採用だったが
会社の人達は、優しく良い人ばかり
で、やっと人間らしい生活が出来た。

ここからなら
両親にも少し近いと思い
奥菜先生にも
その事は伝えたが
両親には、知らせないで欲しいと
お願いした。

それから更に二年が過ぎ
会社の社長の紹介で
お見合いをした。

彩羽みたいに美しいわけでもなく
美春みたいにグラマーでもないが
麻美は、優しくて温かな人だった。
新→35歳
麻美→33歳

麻美にも麻美の両親にも
俺は、全てを話した。
麻美は、俺を思って泣いてくれた。
麻美の両親は、俺の両親に何かあったら
全力で支えてあげなさいと
言ってくれた。

本当に心の温かい人達に
俺は、涙が止まらなかった。
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