お前がいれば、それでいい
プロローグ
「お前···もう要らない。出ていけ」
《承知しました》
手の中にある、唯一の持ち物が、男の声にそう答えた
そんな機械音声に反応することも無く、男は新聞を読む
部屋も、服も、何もかも
今着ている服と手の中にあるものーーースマホ
持ち物なんてそれだけだった
少女は、それに言葉を打ち込み始めた
タタタタターーータッ
言葉を打ち終わった手は、再生ボタンを押そうとして、ーーーーーーーー止まった
「何してる。出ていけ」
少女は頷いて、その家を出た
星が光り輝く夜空の下、
誰も居ない公園で機械音声が響いた
《最後に一つだけ聞いてもいいですかーーーーー
私の名前は、なんですか?》
そう、ただ、虚しく、儚くーーーーーーーーーーーーーー
【それ】から発せられた感情の籠らない音は、暗闇に吸い込まれ、消えていったーーーーーーーーー
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