小学校で初彼に再会しました
「私、結婚なんてしてないよ。私、ずっと後悔してたの。なんであの時、嫌だって言えなかったのか。なんで分かったって言っちゃったのか。私、本当は別れたくなんてなかった。例え、遠距離でも、年に数回しか会えなくなっても、翔とずっと一緒にいたかった。だから……」

そこまで言って、はっと我に返る。

私、なんて恥ずかしいこと言ってるんだろう。
これじゃ、まるで告白じゃない。

「ごめん。私、やっぱり、体育館に戻るね」

私は、慌ててその場から逃げ出そうとした。なのに……

「待てよ!」

翔に手首を掴まれて、逃げ出せない。

「俺も、ずっと後悔してた。遠距離は無理だと勝手に決めつけて、舞花に別れようって言ったこと」

翔の痛いほど真っ直ぐな視線が、向けられる。

「交通費の数万なんて、高校生の俺には、途方もない高額に思えたけど、大学生になってみれば、俺がバイトすればすぐに貯まる額だって分かった。だったら、俺が頑張ってバイトして会いに行くから、やり直そうって言えば良かったのに、そう言って、今度は舞花から振られるのが怖くて。もう、新しい彼氏がいるんじゃないかと思い込んで。でも、そのくせ、ずっと未練たらたらで」

そう……なの?
翔もそんな風に思ってくれてたの?

「本当に悪かったと思ってる。舞花、もし、舞花にその気があるなら……、いや、もし、なくてもその気にさせてみせるから、俺たち、もう一度、やり直そう。今度は、必ず舞花を幸せにしてみせるから。絶対に何があっても、もう舞花を離さないから、だから」

翔は延々とその思いを連ねてくれる。ずっと忘れられなかった彼に、ここまで言ってもらえて、嬉しくない女性がいるだろうか。

「翔!」

私は、翔の言葉を遮った。じゃないと、朝まで語り続けそうだったから。

「よろしくお願いします」

私は、翔に向かって真っ直ぐに言った。

「えっ?」

翔は一瞬、目を丸くする。

「だから、やり直しましょう、私たち。よろしくお願いします」

私はぺこりと頭を下げる。

「いい……のか?」

翔は、自分から言い出しておきながら、呆然とした様子で私を見つめる。

「もちろん。翔……好きよ」

私は、精一杯、思いの丈を伝える。

「あ、もちろん、俺も、舞花が好きだよ。ずっと好きだった」

翔は、私に一歩近寄ってから、

「あっ!」

と固まった。

「何?」

その不思議な行動に、私は、思わず首を傾げる。

「舞花を抱きしめたかったのに、俺、今、どろどろで……」

見ると、確かに、至る所に、泥汚れが付いている。きっと雨の中、一生懸命、土嚢袋を運んだり、積み上げたりしたんだろう。その後も、他の先生方が、仮眠を取っている中、一生懸命、自分に出来ることを探してしていたんだろう。


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