ニセモノの白い椿【完結】
prologue
――君は本当に綺麗だね。名前の通り、まさに椿のようだ。椿の中でも、白い椿だよ。
男は言った。
――白い椿の花言葉を知ってる? 完全なる美しさ、至上の美。つまり、完璧な美しさを表しているんだ。
知ってる。
子供の頃、それを知った時、なんだか妙にがっかりした。
なんて面白くない花言葉かと。
――君ほど美しい人に出会ったことはない。出会ってしまったからには、どうしても君を手に入れたい。どうか僕と――。
その言葉の続きは容易に予想できた。
陳腐な台詞だとも思った。
――結婚してくれないか。
花言葉なんかを口にして”君は美しい”なんて言うような男、今考えてみても胡散臭いと思う。
それなのに、私は頷いていた。
どうしてあの時、頷いたりなんかしたんだろう。
どうして――。
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