ニセモノの白い椿【完結】
”完全なる美しさ”
”至上の美”
”申し分のない魅力”
白い椿の花言葉は、まさに私の姿を表しているようで。
人から『美しい』と言われるたびに、そのイメージに応えようと装って来た。
それはそれは必死になって懸命に、時には自分をすり減らすほどに。
だから、私は理解している。
自分が美しい人間なんかじゃないということ。
装っている時点で偽りなのだ。
容姿という器の中で、いつも醜い自分がみっともなくもがいていた。
私は、美しさを装う、ニセモノの白い椿だ――。
偽物はニセモノでしかない。
『君と結婚できた僕は、世界で一番幸せな男だ』とまで言った男が、他の女に走った。
それも、結婚して一年足らずで。
どうしても手に入れたかったはずの女が、どうしても捨てたい女に変わったらしい。
そして私は、放り出されて一人になった。
”本当はニセモノだったということに気付いたからーー”
という理由だったらよかったのに。
あの男はそんなことに気付くことなく、ただ『君の美しさが窮屈だ』と言った。
結局誰も、私を見ようとしない。
外見に意識を向けられたまま、心に目を向けてくれない。
まあ、それも仕方ないのだけれど。
だって、完璧に装って来たのだから――。