ニセモノの白い椿【完結】


「まず。賃料を入れさせてください」

「賃料なんていいよ。ここ持ち家だって言っただろ? それに、生田さん、今のアパートの家賃、とりあえずは払わなくちゃいけないんだ。ここの部屋のことは気にしなくていい」

「そういうわけにはいきません」

そんなことしたら、大人として自分が許せない。きっぱりと即答した。

「……分かったよ。じゃあ、光熱費代として月1万で。これ以上は俺は譲らないよ」

くっ……。木村も木村で頑固なことは分かっている。
仕方がないから、木村の意見をのむことにした。

「それから。一緒に住むということで既に多大な迷惑をかけることになるけど、私は木村さんの生活を一切邪魔はしたくないので。私はいないものと思って、これまで通りの生活をしてください。もし、女の子を連れて帰りたいなんて夜があったら、一報入れてくれれば、こちらで対処します」

いくら今、恋人はいないと言っても独身の男だ。いつなんどき、そういう状況になるかは分からない。

大真面目にそう言ったら、木村が吹き出した。

「何がおかしいのよ。大切なことじゃない。あなたの未来を邪魔するようなことになったら……。私は、責任を感じるもの」

「大丈夫。俺も、そんなに飢えていないから。生田さんと一緒に暮らしている時にわざわざそんなことしようなんて思わない。でも、まあ、もし万が一そういうことになったら遠慮なくそうさせてもらうよ」

「そうよ。最初からそう言えばいいのよ」

「生田さんがそれで気を使わずに過ごせるのなら、そうします」

何が楽しいのか、私が一緒に暮らすことに頷いてから木村がずっとへらへらしている。

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