不埒な旦那様に愛されて~婚約した相手はラスボス級の権力を持つ冷たい旦那さまでした。

1、高級クラブで……。

困ったことになった。
さすがに飯塚美奈もこういうハブニングは予測していなかった。

彼の方もはっきり言ってそうだったのだろう?
美奈を見て額に手を当てると第一声に不機嫌そうに
「ちっ」
と舌打ちしたのだった。

美奈が慌ててお起き上がり上ずった声で
「今日の出会いは無かったことにしませんか? |紫音彰≪しおんあきら≫社長」
そう言えば彼が不機嫌そうに
「ああ、そうだな、それがお互いの為か?」
そう言いながらすっと札束の入っているであろう分厚い茶封筒を取り出し無言で差し出した。

いくら何でも、美奈もそこまでしてほしい訳ではない。

「いただけません、そんなお金、私は、そう言うつもりじゃなくて」
そう慌てれば
「あのサイトをこの先も使うのなら、纏まった金はあった方がいいだろう? 今回の出会いのお小遣いだと思えばいい、収めてくれ」
たしかに、あのサイトで、失敗した時お駄賃をハバルのが男性側の紳士対応とされてはいるが……。
額が額だろう?

こんな、満額で今宵の事は忘れますという手切れ金だとしてもだ。
この額では、彼の方が確実に損をする。

満額過ぎるのだ。
たかが、一度の出会いに毎回これだけ支払われるとしたら……美奈はぞっとした。

そして茶封筒の中から5万円だけ抜くと
「これだけで、けっこうです」
そう言って自分の財布にしまおうとすれば彰が
「この後、暇か?」
そう突然呟かれて彰を慌ててみればそれはそれは奇麗な笑みを浮かべていた。

戸惑えば
「よく考えたらさ、婚約者が無理ってだけだなっと思ってね……俺と友達登録しない?」
その問いかけに美奈は俯いた。

「お試しでなら、いいですよ、嫌に成ったら、すぐ切りますからね」
そう言いながらお題にスマホを取り出すとサイトを開き、出会い登録の項目欄に友達チェックを入れると
「まぁ、友達なら、問題が無いって、社長の感性を疑いたくなります」
そう言えばムッとした顔を彰がすると
「それでは、まるで、俺が酷い男性だと言っているように聞こえるんだけど? 」
そう言いながらすっと差し出された片手に美奈は戸惑う。

もともと、このサイトの登録する男性も女性もそれぞれに普通じゃない人が多い。
何をされるか分からぬこの状態で、手を取るのは得策ではないだろう。

そして、手を取るという事はサイトの中ではそう言う行為が可ですよって認識になるのだ。
ここで断るやり方はその手を払うのみ。

けど、どういう訳か、今日の美奈はそんな彼に危険な魅力を感じつつもその手を取っていた。

「おや、良いのか? 意外と乗り気で、驚いたよ? さてと、初日だし、ちゃんとホテルで可愛がろうな? で、そう言えばお前の事リアルネームで呼んでもいいのか?」
そう言われて美奈は困った顔をした。

「いいですけど、下の名前で呼ぶのは会ってる時だけにしてくださいよ、会社の時は名字でお願いします」
そう言えば頷いたので美奈は手を引かれながら彰の姿を見つめつつ、ドキドキしていた。
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