赤いゼラニウムが咲く頃に
初めまして、やっと会えたね
”おい待てよっ!”
”取れるもんなら取ってみろ〜!っはは!”
「·····っ、”また”だ。」
額に手を当てながら起きる。
時刻は6時48分。いつもより少し早い目覚め。
また、見えた。
クラスメイトがいつものようにはしゃいで走り回り、ロッカーの上に置いてあった花瓶が落ちて割れる。
「今日はこれくらいか。これは避けろってことかな。」
私には未来が見える。
と言っても、ほんの少しだけ。
出来事のほんの一部しか見えないことの方が多い。
でもたまに、今日みたいにわかりやすい未来もある。
幼い頃から時々未来がわかる子だった。みんな見えているものなのだと思い、周りの子に話した時、変だと言われ、初めて自分にしかない能力なのだと気がついた。
もしかしたらどこかに、同じ能力を持った人がいるのかもしれない。けれど、聞いたことも見たこともないから、希少ではあるのだろう。
正直、もっと都合のいい能力であって欲しかった。
テスト範囲がわかるとか、カバンの中身抜き打ちチェックがあるとか、今日のバイトのシフトが突然変わる、とか。
でも、当の本人は、見えていない人ばかりだから、私だけズルいことしてるみたいになっちゃうかもね。という気持ちでいる。
彼女の名は、藤 日和 (ふじ ひより)
今日から高校3年生になる。
着慣れた制服に着替え、部屋を出る。
今日もまた、いつもと変わらない一日になるだろうな。
そんなことを考えながら、学校に向かう準備を進める。
「今日の朝ごはんなんだろ〜、、」
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