赤いゼラニウムが咲く頃に
手洗い場に着き、2人で並び、手を洗う。
重い口を、日和が開いた。
「あの、さ、昨日のことなんだけど」
「未来のこと?」
随分と直球で来るな、と日和は思った。でも、話が早くて助かる。
「そう。そのことなんだけど、誰にも言わないで欲しいの。あと、メモ、返して欲しいんだ。」
「わかった。その前に聞きたいんだけど、未来が見えるって、どういうことなの?」
「うーん。断片的に見える感じかな。事細かに何かがわかる訳でもなくて、クイズのヒントくらいのものしか見えないんだよね。重要なものだったり、どうでもよかったり、色々。」
ふーん。と一縷はなにか考え事をしているかのような表情をしていた。
「日和にお願いがあるんだけど。」
「何?」
「とりあえず、僕の家まで来てくれない?」
日和は固まった。この短時間で少し距離は縮まったが、さすがに2回会っただけの人の家に行くのはどうなのか、しかも相手は男だ。力でかなう相手ではない。もし何かあったら、と考えるのは当たり前だった。
「別に何か変なことをしようとしている訳じゃないんだ。でも、日和が嫌ならいいんだ。」
なぜ私を自分の家に招こうとしているのだろう。単純に聞けばいい話だが、疑っていると言っているようなものだ。それはそれで言い難い。
先に口を開いたのは一縷だった。
「じゃあ、とりあえず話しながら歩こう。」
「わかった。」
お互い納得し、校門へと向かった。