赤いゼラニウムが咲く頃に



月曜日、朝から雨が降っている。湿気の多い、重たい空気。自転車通学の人が着てきたであろうカッパが、教室の後ろに干してある。水滴が落ち、床が濡れている。


あれ、絶対誰か滑るでしょ。と考えていると、先生が来て、朝のHRが始まる。



「A高校の2年生女子が、行方不明になっている。○○の近くにある住宅街が通学路らしい。みんなも気をつけるように。できるだけ一人で帰らず、友達と帰るように。」



ざわつく教室。



A高校って、、ピンクのリボンだよね?昨日の子、、大丈夫かな、、、



「一縷に一応連絡するか、、」



スマホを開き、メッセージを送る。



[A高校の女の子が行方不明になったみたいなんだけど、通学路が私の家の住宅街から近いの。帰りになにか無かった?]



スマホを閉じ、教室を出る。ロッカーから教科書とノートを取りだし、授業に向かう。



後ろからトントン、と方を叩かれ振り向くと、担任が立っていた。



「藤、お前の家、さっき話したところから近いだろ。帰りとか、気をつけろよ。バイトで帰りが遅くなることもあるだろう。」



この先生は、私が1年生の時からの担任だ。



「そうですね。気をつけます。」



授業頑張れよ〜、と手を振りながらダルそうに廊下を歩く。

新任の時はきちっとしていたのに、慣れてだいぶ緩くなったもんだな。



ブブッとスマホが鳴った。




[僕は何も見てないけど、事件のことは今朝のニュースで知ったよ。とりあえず、帰る時間が分かったら連絡して。迎えに行くから。授業頑張ってね。]




昨日までは送るなんていいと思っていたが、近くで事件となると、さすがに能天気な日和も不安になる。彼が送り迎えしてくれるのは有難い。




「日和ちゃーん!授業始まっちゃうよー?」



そうだった、と小走りで、呼ばれた方へ向かっていった。






そういえば、一縷はなんでこの事件のことを調べているんだろう?







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