赤いゼラニウムが咲く頃に
「お邪魔します。」
「ただいま〜。」
それぞれ挨拶を口にし、靴を脱ぐ。
しかし、応答はない。
出掛けているんだろうか?と首を傾げながら、自室に案内した。
「結構物少ないんだね。」
「植物が置いてあるからね。ゴチャゴチャに見えないようにしてる。あとあんまり物とか集めるの好きじゃないんだよね。」
そう言い、ベッドに腰かけて、うーんと背伸びをした。
一縷も、ひとまず座って落ち着くことにした。
「あ、お茶入れてくるね。待ってて。」
「いや、そんな気使わないで。すぐ帰るから。」
「そんな遠慮しないでよ。家に自分の知り合いとか友達呼んだことないから、ちょっと嬉しいの。」
なんだよその顔。そんな顔されたら断れないじゃん。と心の中で呟いた。
じゃあお願いしてもいいかな。と言うと、日和は笑顔で、すぐ持ってくる!と小走りで出ていった。
名前の通り、彼女の笑顔はポカポカするな。と柄にもないことを考える。
ひとまず、彼女について知れそうなものを探ろうとした。が、すぐに手を止めた。
彼女は自分を信用しようとしてくれている。それなのにこんなことをしたら、嫌われるどころか、情報まで失われてしまう。そんなことをしたら上手くいかなくなってしまう。彼女が戻ってくるまで待とう。