赤いゼラニウムが咲く頃に
始業式も終わり、帰り道。
時刻はまだお昼前。
とはいえ、濡れたスカートで帰るには肌寒い季節。
いつもの癖で持ってきていたジャージがあって助かった。
「ねえ」
部活でよく使うから。今日は部活無かったんだけど。
「君、聞こえてる?」
ん?
辺りをキョロキョロ見回す。
「私のことですか?」
「僕の周りに、君しか居なくない?」
「まぁ、、って、誰ですか、、?」
「ああ、僕は東雲 一縷 (しののめ いちる)。よろしくね。」
「一縷、、さん?、、くん?」
「一縷でいいよ。」
「同い年なの?」
「いや、違うけど。」
「なんで同い年じゃないってわかるの?」
「なんとなく違うかなって思っただけ。何年生なの?」
「3年生だよ。」
「3年生か、、名前は?」
「藤 日和」
「日和ね。知らない人に名前教えるの危ないからダメだよ。」
「じゃあ聞かないでよ。てか、最初に知らない人に名前教えたの一縷じゃん。」
「そうだよ。でも日和は危ない人じゃないし。」
「だからなんでわかるの?」
「なんとなくだよ。」
何この変な人。と日和は不審に思う。
「ところでこれ、落としたよ。」
「あ、ありがとう。」
そう言い、彼は落ちていたメモを拾い、渡してくれた。
って。まずい。
メモ落としてたの気が付かなかった。
しかもただのメモじゃなくて、今まで見た未来のことが書いてある。
未来が見えるなんて知られたら変な人だと思われる!ていうかこれ書いてる時点で変な人に見られるし!
とりあえずバレてなさそう、、?かな?
「へぇー、未来が見えるんだぁ?」
バレてた。普通にバレてた。勝手に読むなし。いや落としやすいポッケに入れてた私も悪いんだけど!人のメモ普通勝手に読む?!
ダメだ。とりあえずここは平常心を保って、
「あれ?これ私のじゃないや。」
「え、でもありがとうって受け取ろうとしてたじゃん。」
いやそれは、、条件反射ってことにしてれない?なんでこう、鋭いかな。
「条件反射で。」
「顔に出てるよ。」
くっそー。腹立つなこいつ。
苛立ちが少しずつ顔に出る。
「本当に私のじゃないんだってば。」
「ふーん?じゃあこれは僕が持ってるね。」
「お好きにどうぞ。」
なんだなんだこいつ!ほんとムカつくな?!私のだけど私のじゃないんだぞ?!(?)
「じゃあ私帰るから。じゃあね。一縷。」
「そっか。またね。日和。」