赤いゼラニウムが咲く頃に




ホースを伝って出る水がきらきらと光り、虹を作り、輝いている。



植物に伝う水滴がきらきらと光り、そのまま垂れて土に落ちていく。



「やっぱり私一人だよね〜」





一人で静かにぼやいた。



分かってはいたけど寂しい。そりゃ来ないよね!!園芸部だもん!!



この学校の園芸部は、ほとんどが幽霊部員な為、当番に来るのは日和と、昨日日和に話しかけていたあの子だけ。

多少の不満はあるものの、一人でできない量でもないため、2人で回してお世話している。



水やりが終わり、今度は屈んで夾竹桃(キョウチクトウ)の苗を植える。



「夾竹桃の花言葉、後で調べよ。」



日和の最近のマイブームは、育てた花の花言葉を調べること。花言葉から元気をもらったり、人へのプレゼントとして送る時に、花言葉で選ぶことが多いからだ。



そして不思議と、自分の身近にある花言葉を調べると、花言葉に似たできごとが起こる。たまたまかもしれないが、それもヒントに、未来を見たりもする。








____キィィィィィン____





「いった、、、っ、、痛い、、」



またきた。見える。










今度は何?












ザーっと雨の降る音と共に、誰かの怒鳴り声がする。




”だーかーらぁー!!!さっきからうるせぇんだよ!!!”



”ご、、ごめん、、なさっ、、ヒック、、”



”ここから逃げるつもりなんだろ?なあ?”



”ちがっ、、”
















「っは、、、、何今の、、、」



気持ち悪い汗が背中を伝う。



今のはなんだ、、?男が女の子を罵倒している?女の子は制服を着ていた。男の顔ははっきりとは見えなかったけど、誰かに似ているような、、?






「大丈夫?」



「大丈夫です、、って、、、え?」







何故か目の前に、昨日の変人、いや、不審者がいる。



ここ学校の敷地内ね?なんで勝手に入ってるの?というか何しに来たの、、?



「なんでここに居るの?って顔してるね。日和がどこの高校に通ってるか聞くの忘れたな〜と思ってさ。でも近くの高校っていったらここくらいしかないし、制服もここのだし、そうかなって思って入ってきちゃった。」



入ってきちゃったじゃ済まされないでしょ、、。




「何しに来たんですか?」



「なんで急に敬語なの?」



「いや別に。」



「そんな冷たくしなくたっていいじゃん。酷い。」



酷いって言われたって、、。不審者なんだもん。



「ねえそれ、僕も手伝っていい?」



そう言って、植えている苗を指さす。



「良いですけど、服とか汚れちゃいますよ?」



「大丈夫。なんか楽しそうだし、やりたい。」



園芸ってあんまり楽しそうなんて思われないから、なんか嬉しいな。



とりあえず、話してみないとどんな人かもわからないし、作業しながら探ってみようかな。



「じゃあ、私が土を掘るから、一縷は苗を埋めてくれる?」



「あっ、やっと敬語外れたね。嬉しい。」



「はいはい。わかったからさっさと進めるよ。」



「はーい。」




とりあえず、一旦未来のことは保留にしよう。



< 7 / 19 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop