赤いゼラニウムが咲く頃に
時刻は午後3時過ぎ。
こんなもんかなあ。
立ち上がり、植えた苗を確認する。この短時間でよくやったもんだ。
疲れている私とは正反対に、涼しげな顔で夾竹桃を見つめる一縷。
「よし。そろそろおしまいにしよう。」
手について乾いた土をパンパンと落としながら、声を掛けた。
グーッ
やばっ。
「、、お腹空いた、、。」
「まだ夕方前だよ?」
「お昼過ぎに起きたから、ご飯食べてないの、、」
「じゃあご飯でも食べに行く?」
「でも、お財布持ってきてないし、帰って食べるよ。」
「そっか。じゃあ、家まで送っていくよ。」
「え、いいよ別に。そんな遠くでもないし。」
「ダメだよ。」
ものすごく真剣な目で私を見つめる。普段は割と、といっても普段なんて知らないのだが、出会ってから一度もこんな目で見つめられたことは無い。
どちらかというと、へらへらしているようなタイプだ。なぜこんなに怖い顔をするのか、日和にはわからなかった。
「一緒に帰るって言ったら帰る。いいね?」
なんだか断ってはいけないような気がした。
「わ、わかった。わかったからそんな怖い顔しなくても。」
「ごめんごめん。日和が言うこと聞かないからだよ?」
「言うことって。親じゃないんだから。」
「はははっ。確かに。」
「とりあえず、手洗いに行こ。」
「そうだね。」
心配性なのかな?と考えながら、手洗い場に向かった。