契約ウエディング~氷の御曹司は代役花嫁に恋の病を煩う~
俺の門出にあのような大恥をかかせておいて本当は顔を見るのも嫌だが、ビジネスの話もあるし、渋々承知した。

午後十五時。
社長室に工藤社長は若い女性を伴い、現れた。

「君は…亜優さん」

挙式当日に秘書と逃げたはずの新婦の亜優さんが申し訳なさそうな表情で俺の前に戻って来た。

「工藤社長、これはどう言うコトですか?」

俺は一生会いたくない女性を連れて来られ、激怒した。
俺の怒声で彼女は泣き出す始末。

「長谷川社長のお怒りは御尤もです…でも、お願いします…私の話を訊いて下さい!!」

「…訊くだけ訊こうじゃないか…淡路、お二人にコーヒーを淹れてくれ」

三人で応接ソファに腰を下ろした。

「実は我々親子は秘書の梶原に騙されていたんです…」

「秘書に騙された?それはどう言うコトですか?工藤社長」

「秘書の梶原は会社の金を横領していたんです…横領の発覚を恐れ、娘を騙して…挙式当日に駆け落ちを企てたと言いますか…」

「…亜優さんと駆け落ちしたのは自分の罪から目を逸らす為…時間稼ぎだったと言うコトですか?」

「そうです!さすがは長谷川社長…勘が鋭い」

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