契約ウエディング~氷の御曹司は代役花嫁に恋の病を煩う~
「いい人だって書いてる…」

「いい人か…杏南は澄子さんに似て、とても明るくてココロが温かい…」

「えっ?」

「凄く杏南のコト…大切に想っていた。その言葉の端々に感じられた。両親の影響とは言え、結婚を契約と同じだなんて思っていた自分が恥ずかしい」

「俊吾…」

「澄子さん…こんなコト言うのは不謹慎 だけど…もしかしたら、自分の死期を悟っていたのかもしれないな」

私は黙って湯呑に急須のお茶を注いだ。

「返すよ」

彼の前にそっと湯吞みを置くと絵葉書を返した。

「全部読んだ?」

「あぁ」

「俺も澄子さんからあれからラブレター貰ったから…」

「えっ?」

彼はブリーフケースから一通の封筒を取り出した。

「君のは短いけど…俺のは便せんにすれば…四枚だ…」

「えぇ~っ!?」

「全文、杏南のコトばかりだけど…あんぱん事件の話も書いていたな…あ…それと…俺が貰ったラブレターの話も…」

「お母さん!?一体何を書いてるのよ!!」

「おいおい、読んでも…無駄だぞ…」



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