契約ウエディング~氷の御曹司は代役花嫁に恋の病を煩う~
「君に縋られても困る…」

「貴方はやっぱり…『氷の御曹司』ですね…」

「俺の氷を溶かしたのは妻だけだ…」

俺はそう吐き捨てて、彼女の縋る目に背中を向けて病室をさっさと出て行った。
ドアの向こうでは夫人が心配そうに唇を噛み、待っていた。

「話はもう終わりですか?長谷川社長」

「…終わりです」

「本当に良く見れば見る程…母親の千紗さんに似てますね…」

「!?貴方は母の知り合いですか?」

「えぇー共に貴方の父親を取り合った仲ですもん」

「娘の亜優さんは自殺ではないと言ってました。睡眠薬の飲み過ぎだと…俺と娘を結婚させようとする魂胆が見えましたよ。
父を母に奪われた腹いせですか…」

「そう…思われても仕方がないわね…」

「でも、俺は生憎妻と離婚するつもりはありません…失礼します」

俺は毅然とした態度で接して立ち去った。

俺の父を母と取り合った仲とはどこまで念に持ってんだ。夫人の恨み辛みには恐れ入った。





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