契約ウエディング~氷の御曹司は代役花嫁に恋の病を煩う~
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夕食はミシュランで三ツ星を獲得したフレンチレストランのフルコース。

結婚祝いにと意気なシャンパンのプレゼント付き。

磨き抜かれたカトラリーがセッティングされ、その中心にはメインとなる大皿の上にはナプキンがセットされていた。

私はチラリと目の前に座る俊吾さんを見た。

粗相がないようにしないと。

「・・・分からないなら、教えてくれと言えば教えてやるのに」

「え、あ…」

彼は私の盗み目に気づいていた。

「ほら、そこのナプキンを二つ折りにしてまずは膝元に置けばいい」

「ありがとう」

私は彼のアドバイス通り、ナプキンを二つ折りして膝の上においた。

「料理が運ばれて来たら、その都度教えてやる・・・」

「ありがとう」

「杏南は俺と結婚しても、花嫁修業が必要だな」

「だから…私は・・・それに私…仕事してるし」

「・・・仕事は確か『ハートフル化粧品』の総務部だったな。総務なんて唯の雑用係だろ?
君が働かなくても…大丈夫だ。杏南」


「・・・そう言われても…バリバリ仕事してる俊吾さんから見れば、総務の仕事なんて唯の雑用係だけど。でも、やるコトは一杯あるんだから…それに遣り甲斐だってある」

「…遣り甲斐ね…もしかして、会社に交際相手でも居るのか?」
「そんな人は居ませんよ」
まぁ、気になる人は居るけど。


「俺のコト、嫌いか?」
「いえ」
「なら、問題ないな」

彼は一方的に話を畳んで、ニヤリと笑った。
高層の全面硝子越しに見える街の夜景。

「都心の夜景に比べると劣るが…この街は子育てのしやすい街だ…」

突然、子供の話をされ、飲んでいたグラスの水を戻しそうになり、噎せる。

「どうして…子供の話ばかりするんですか?」

「後継者作りは長谷川家の当主としては一番の問題だからな」

「俊吾さんの次の誕生日って…」


「十一月十九日だから…後五ヵ月しかない」

「・・・五ヵ月!?」

「今夜から・・・頑張ってくれよ。杏南」

「無理無理無理です」

「顔が真っ赤だぞ・・・杏南」
俊吾さんは口許を手で抑えて笑いを懸命に堪えていた。




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