契約ウエディング~氷の御曹司は代役花嫁に恋の病を煩う~
残された私は俊吾の手を握りしめた。

大きな手の平に骨ばった長い指。
私は彼の指と自分の指を交互に絡め合わせ、恋人繋ぎをした。

冷たく感じられる彼の体温…今は発熱で熱い。私は彼の手を握りしめたまま眠りついた。

******

「杏南…起きろっ」

何処からともなく彼の声が聞こえた。

突然、夢の中の世界が揺れ動き、私は目を開ける。
俊吾がカラダを起こし、私のカラダを揺すっていた。

「あ…俊吾・・・」

「此処は何処だ?」

彼は訝し気に辺りを見回した。

「此処は『清和会総合病院』です。突然、車内で俊吾が気を失ったから…車で運び込みました」

「そうなのか…悪い、全然憶えていない…」

「いいですよ…でも、良かった…」

私は彼の額に手を当て、熱を見るが、普段と変わらない平熱に戻っていた。

「熱もないみたい」

「・・・杏南様、入りますね」
黒崎さんがひと声掛けて、ドアを開けて入って来た。

「俊吾様!!?意識を戻されたんですね…」

黒崎さんは涙目で俊吾を見つめ、安堵した。




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