契約ウエディング~氷の御曹司は代役花嫁に恋の病を煩う~
妊娠
俊吾は一週間のニューヨーク出張から帰国した。

「三十一歳の誕生日おめでとう…俊吾」

「杏南、ありがとう…」

俊吾は私に『ティファニー』の紙袋を渡した。

「お土産だ…」

「いいのに…」

「早く、開けてみろよ」
彼は性急に急かした。私はソファに腰を下ろし、紙袋の中に入っている二つの箱を取り出した。
一つは動物柄のベビー用のスプーンとフォークのセット。
もう一つはハート形のダイヤがあしらわれたプラチナのネックスレス。

「これは俺達の赤ちゃん用。ネックレスは君用だ。着けてあげるから…髪を少し上げて…」

「うん」

私は言われるままに長い髪を手でアップにして押えた。
すると、俊吾がネックレスの留め金を外し、私の首許に着ける。首に一瞬ヒヤリとした感覚が走った。

「はい、着けたよ」

「ありがとう・・・」

「もう少し大きめでも良かったんだけど…普段身に着けて欲しいから…これにした」

「素敵よ」

「このスプーンとフォークのセットも可愛いわね…」

「あぁ」

「まぁ、赤ちゃんは出来なかったけど…願いを込めて…買った」

「その話なんだけど…」

< 155 / 224 >

この作品をシェア

pagetop