契約ウエディング~氷の御曹司は代役花嫁に恋の病を煩う~
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俊吾は私に内緒でエクゼクティブスイートをリザーブしていた。
「この部屋は国賓の方々が宿泊される特別室だ…」

「二人で泊まるには広すぎるわよ…」

「…まぁ、次は『ヘブンズホテル』に泊まろう…」

「あ…でも・・・」

彼は深い溜息を吐き、ゴブラン織りのソファに腰を下ろした。
セレブ育ちの彼は直ぐにこの豪華な空間に慣れ、我が家並みに寛いでしまう。

「杏南君は相変わらず…躊躇するな…そんな所に突っ立ってないで、座れよ…立ちっぱなしは赤ちゃんにも良くないぞ」

赤ちゃんを引き合いに出されたら、今の私はとっても弱い。

私は彼の隣に腰を下ろした。すると俊吾が私の膝に頭をゴロンとして来た。

「俊吾…」

「…身重の君とイチャイチャできない。これぐらいはいいよな…」

「あ、うん…」

私は彼のワックスのついた髪をに触れた。

「おいおい、ヘアが乱れるから触るな…杏南」

「別に乱れてもいいじゃないですか…もう部屋から出ないんだし…」

「こら」

私は彼に怒られても髪を触り続けた。

「んっ?」

いつの間にか彼は寝息を立て、眠っていた。

考えて見れば、副社長就任早々から、国家事業のプロジェックトチームの舵取りを任されていた俊吾。
疲れないワケないよね…






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