契約ウエディング~氷の御曹司は代役花嫁に恋の病を煩う~
デジタルタトゥー
巨大複合型都市・シオサイト。国際戦略総合特区の一つ。
『ナショナルデータ』本社はその一角に二十階建て社屋ビルを構えていた。

副社長室は最上階フロア。
他のフロアとは違い、廊下はホテルのように絨毯が敷き詰められ、執務室は機能性を重視したシンプルモダンなデザインのプレジデントデスクや応接ソファ、多目的棚が並び、観葉植物のグリーンが無機質に見える空間を彩っていた。

「失礼します…」

俺にわざわざ内線を入れてアポを取り、酒井が会いに来た。

「俺に話って何だ?」

「貴方に見せたいモノがあって来ました…副社長」

「貴方の社内メールに画像を添付したんですが…」


「社内メール?」

俺はスリープをさせたデスクトップパソコンを立ち上げ、酒井の社内メールを見た。

「これは…」

「…まぁ、画像は古いし、映りも悪いですけど…副社長の奥さんでしょ?」

俺は画像を停止させ、酒井を睨み据えた。

腸が煮えくり返る思いだった。
「この画像はほんの一部。
これがネットに拡散されればどうなるが分かりますよね…副社長」

「お前はこの俺を脅しているのか?」


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