契約ウエディング~氷の御曹司は代役花嫁に恋の病を煩う~
******
『東亜医科大付属病院』

私のお腹も八ヵ月目に入った。
切迫早産で入院した睦月さんを俊吾と二人で見舞う。

「ありがとう…杏南さん」
「いえ…想像していた以上にお元気で良かったです…」

「二人からも言ってくれ…睦月のヤツ…安静してなきゃいけないのに…ノートパソコンを病室に持ち込んで、仕事するんだよ…」

彼女の付き添っていた神楽坂社長が嘆いていた。

睦月さんは有名な料理家。
私も彼女のレシピ本を沢山持っている。

「いいじゃないですか…神楽坂社長…」

「そうですよ…睦月さんは凄い人ですよ…女性として尊敬します」

「・・・自分の体調は良く分かってる。調子の悪い時はキチンと仕事をセーブして、休息するわよ。豊」

「睦月…」

「まぁ、長居無用だな…帰ろうか?杏南」

「あ、はい…」

「じゃ帰るよ。神楽坂社長」

神楽坂社長も私達と一緒に廊下に出て、見送ってくれた。

「貴方の心配は分かっていますよ…」

睦月さんは二度流産して、一度は死産。
医者には原因不明の『不育症』だと診断された。

神楽坂社長が心配するのは当然だった。

「じゃまた来ます…」

「ありがとう御座います。長谷川副社長に杏南さん」

< 198 / 224 >

この作品をシェア

pagetop