契約ウエディング~氷の御曹司は代役花嫁に恋の病を煩う~
「中に案内しますので…二人して抱っこしてあげてください」
槇村先生の案内で、新生児室に入った。
硝子越しではなく、直に我が子をこの手に抱っこする。
まだまだ、ぎこちない手つきだけど、私はこうして腕の中に我が子を抱き、ママになったんだと実感を噛み締めた。
「全てのパーツが小さいな…」
俊吾は赤ちゃんの紅葉のような手の平に触れた。
するとキュッと彼の指を掴んだ。
「これが原子反射の一種…把握反射だな…」
「抱っこする?俊吾」
「勿論…」
俊吾は積極的に赤ちゃんを抱っこした。
槇村先生はいつもなら明るい笑顔なのに。
何処か憂いを見せていた。
「槇村先生?」
「ん、あ・・・名前はもう決まってるの?」
「名前??あ…」
私は俊吾の方を見る。
「はい…俊樹(トシキ)です」
「俊樹君か…カッコいい名前だ…名前がお決まりなら、後で看護師に伝えおいてください…そうだ・・・長谷川副社長、後で医局にお立ち寄りお願いします。出生証明書お渡ししますので」
「分かりました…ありがとう御座います…」
槇村先生は先に新生児室を出て行った。