契約ウエディング~氷の御曹司は代役花嫁に恋の病を煩う~
「いえ・・・少しだけ遥の過去が知れて…嬉しいです」
「槇村先生…」

「我が子を救えなかったのは非常に辛いですが…子を失った人の痛みを理解しました。いい経験になったと思います。産科医として技術向上に邁進したいと思いますよ。長谷川副社長」

「俊吾君…」

遥さんが庭園に現れた。

「遥・・・」

「奏弥さんとなんの話??」

「俺と交際していた当時の話をしていた…」

「・・・私に内緒で酷いわよ…俊吾君」

「槇村先生は遥さんにベタ惚れだ…完全に恋の病を煩っている。そうですよね…」

「・・・恋の病か…そうだな…」

「奏弥さん…」

「・・・俺はハッキリ言っておく。絶対に離婚はしないぞ!!遥」

「貴方にわがままを言って…散々苦しませて…最後は貴方に我が子を…」

「それは仕方がないコトだ…ようやく子を失った人達の心の痛みを理解した。生と死の狭間で仕事をしている以上…色んなコトがある…そうだろ?遥」

「・・・あるけど…」

「俺は帰ります…後はお二人でお話下さい」

「ありがとう…長谷川副社長」

「俺の方こそ…妻が無事に出産できたのは貴方のおかげですよ、感謝します。槇村先生」

俺もまた…

――――代役花嫁の杏南に恋の病を煩っていた。





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