契約ウエディング～氷の御曹司は代役花嫁に恋の病を煩う～

新居

雲の隙間から僅かに見える青い空。

緑に囲まれた低層の高級マンション『ル・シェル』の建物が見えて来た。
ヨーロピアン風の外観、一戸数億円すると言う高級マンション。フロントにはコンシェルジュが常駐。
警備員も二十四時間体制で監視し、防犯カメラも数も多く、セキュリティカードシステムが導入され、容易には各戸の行き来が出来ないようになっているらしい。

そのマンションの最上階が俊吾さんの部屋。
初めて彼のテリトリーに足を踏み入れた。


最上階は全て俊吾さんの部屋になっていて、その圧倒的な広さに驚きを隠せなかった。

「この部屋に一人で住んでたんですか？俊吾さん」

「あぁ」

彼は素気なく返し、私をリビングルームに案内した。

リビングのソファはL字型の黒のレザーソファで友人を十人ぐらい招いても全然座れる大きさ。

ダイニングテーブルも同様。

液晶のテレビも巨大で全てがダイナミックな印象を受けた。

自動でシーリングライトとクーラーも作動し始める。

「此処が俺と君の新居だ。俺はこれから着替えて、大手町の本社に出勤する。杏南も荷物運びは黒崎に頼んだから…」

俊吾さんは急いだ様子で奥の部屋に消えてしまった。