契約ウエディング~氷の御曹司は代役花嫁に恋の病を煩う~
「毎日、お迎え付きの車なんですか?」

「当然だ…」

俊吾さんはドヤ顔で返す。

「杏南今日は俺と同乗だけど、明日からは黒崎の送迎車で通勤しろ」

「分かりました」

そう言うと俊吾さんはまた唇を引き結び、会議用の資料に目を通し始める。

結局、昨日の夜も同じベットで就寝したけど何もなかった。

「ハネムーン先のアマルフィ海岸って…イタリアのリゾート地ですよね…」

「そうだよ…行ったコトあるのか?」

「いえ、ヨーロッパは初めてです…」

「そっか…ハネムーンプランは最高級のグレードだ。きっといい想い出にはなるぞ」

「いい想い出って・・・それは愛し合うカップルが行くから、そうなるのであって…私達は・・・」

「まだ、そんなコト言ってるのか?俺なりに君の希望通り、溺愛しているつもりだ…」

「えっ?何処が?」

「何処がって…昨日の夜だって…杏南のコトを大切に扱おうと思って…手出しはしなかったんだぞ…」

「俊吾・・・さん?」

「やはり…君の思ってる溺愛の定義は俺と違うのか?」

「いえ・・・まぁ~」

「だから、杏南君も…」

意地悪な所もあるけど、昔のように優しい所も残っていた。
「考えておきます」

「考えている余裕は余りないぞ」

「どうして?」

「赤ちゃんは授かり物だ…出来るだけ早めに始めないと…俺の誕生日が来てしまう」

「分かりました…」

「分かっているなら、キスしよう」

「えっ?で、でも・・・前に…淡路さんが」

「淡路…カーテンを閉めてくれ」

「承知しました」

後部座席と前席の間が自動的にカーテンが仕切られてしまった。

< 39 / 224 >

この作品をシェア

pagetop