契約ウエディング~氷の御曹司は代役花嫁に恋の病を煩う~
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昼の二時にアポを取った俊吾さんが社長室で私の到着を待っていた。

「小泉さん、長谷川社長の隣に座って座って」

調子が良い濱部稜真(ハマベリョウマ)社長は私の顔を見るなり、手招きをして俊吾さんの隣に腰を下ろさせた。

相馬部長も同席していた。

「突然な話で、驚いたよ…『アイスプリンス』で名高い長谷川社長がウチの総務部の小泉さんと結婚したなんて…」

「それにはワケが…」
が私口を割ろうとすれば、俊吾さんが睨んで来た。

「ワケ?」
濱部社長が神妙に呟く。

「まぁ、いいじゃないですか…それよりも突然の話ですが…彼女とハネムーンに行くので一週間ほど、休暇を頂きたいんですが…濱部社長」

「休暇?別にいいけど…そうだな…俺の方から総務部の太下課長に伝えておくよ。君は総務部だし、急ぎの仕事なんてないよな…」

「いえ・・・今度の株主総会の資料作りが…残っていますが…」

「それは他の社員に任せればいい…」

「濱部社長は話が分かる人で助かりました…」

「相馬部長から訊いたぞ…挙式当日に花嫁が失踪したとか…小泉さんは代役なんだろ?まぁ、ウチも人のコトは言えない。
ウチの可愛い社員を泣かすようなコトがあれば…許さないぞ。長谷川社長」

俊吾さんは濱部社長の隣で笑う相馬部長を睨み付けた。

「では、休暇の件はお願いします。濱部社長」

「分かった・・・早速、太下課長を呼ぶから…待っててくれ」

「どうぞ」

仕事復帰した濱部社長夫人・奈那子さんが私達にコーヒーを供した。
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