契約ウエディング~氷の御曹司は代役花嫁に恋の病を煩う~
俊吾も同じ想いだった。
私が先にシャワーを浴び、その後に彼がシャワーを浴びた。
明日はアマルフィ海岸に移動。今夜でローマとはお別れ。

ローマで初めて俊吾に抱かれる。
でも、行為の前にキチンと話した方がいいのかな?

――――私が処女ではないコト。

「杏南…」

俊吾の声が愛しさを込めて私の名前を呼ぶ。
そして、バスローブの姿の彼がベットの中に忍び込んで来た。

鼓動は跳ね、カラダに緊張が走る。

ゆっくりとした動作で、俊吾は私のカラダを組み敷いて来た。

「!!?」

突然、脳裏にあの時の残像がフラッシュバックした。
異様な恐怖に包まれる。
今まで、こんなコトは一度もなかった。熱を帯びていたカラダが急激に冷たくなっていく。
そして、動悸が激しくなり、息が苦しくなる。
「ハッ…ハッ」と突然、過呼吸に襲われた。
「杏南!!?おいっ!?杏南どうした?」

俊吾はカラダを起こしてベットから下りて、ブランドの紙袋を持って来た。


「杏南!!」

俊吾は私の鼻と口許に紙袋を押し当てた。

「ゆっくりと呼吸するんだ・・・杏南」

私は俊吾に言われた通り、吸っては吐き、吸っては吐きを繰り返して、懸命に息を整えた。

苦しかった息遣いも元に戻り、動悸も収まる。

部屋の明かりを点け、俊吾は私の顔色を伺う。

「真っ青だな…大丈夫か?杏南」

「うん…ゴメンなさい」





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