契約ウエディング~氷の御曹司は代役花嫁に恋の病を煩う~
彼に詰め寄っても、白を切るだろうに。それに、余罪もある。反省の色なんて見せないだろうな。

「忙しそうだな…」

その日の夜は父方の妹・充子叔母様の息子・松下大河(マツシタタイガ)と赤坂の老舗料亭『梁山閣』で久しぶりに食事をした。

大河さんは俺よりも八歳年上。

父の不動産会社「長谷川不動産」を俺に代わって継いだ。
私生活では、酒井衆院議員の娘・美奈さんと五年前に結婚。二児の父親となっていた。


俺達は秋の懐石を頂きながら仕事の話をした。

「奥さんの弟の亨彦さんと会うコトはあるのか?」

「ん、あ…この間…会ったよ…娘の誕生日パーティで…亨彦君が何か?」

「いや…最近、IT関係のベンチャー企業を立ち上げたんだろ?」

「あぁ~でも・・・『リバティ』が注目するほどの企業じゃないさ」

「そっか…」

「『リバティジャパン』の俊吾が君の話をしていたって言えば、亨彦君、きっと喜ぶぞ…」

大河さんは俺のグラスに冷酒を注いだ。

「ありがとう、大河さん」

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