契約ウエディング~氷の御曹司は代役花嫁に恋の病を煩う~
決死の夜
「昨日は君を苦しめるようなコト言って、ゴメン、杏南」

「俊吾…!?」

開口一番、俊吾は私に謝った。

「喧嘩ですか?」

何も知らない黒崎さんは首を傾げた。

「そんな所だ…なっ、杏南」

俊吾に相槌を求められ反射的に頷いた。

最近、俊吾も元気がない。必死に笑顔を貼り付けて、明るく振舞うけど、私も精神的に追い詰められていた。


ローマで味わったひと時の蜜月が懐かしい。

全ては私のせい。俊吾は真っすぐに私を愛して大切にしてくれていると言うのに。

私は彼を全てを受け入れられない。

食後、抗うつ剤を飲んだ。

「薬も飲んでるのか?」

「うん…」

俊吾は薬の服用に対しては抵抗感があったのか、複雑な表情を浮かべた。

「ゴメンなさい…」

「いや…謝らなくていい…」



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