誘拐は激甘生活の始まりV

「飲みたいです！」

杏菜はそう言い、リオンと共に中庭へ向かう。花が咲き乱れ、手入れのされた中庭に置かれたテーブルの上にはティータイムの用意がされていた。

「今日の紅茶はダージリンだよ」

リオンがそう微笑み、杏菜の目の前に置かれたティーカップに紅茶を注ぐ。杏菜は紅茶を一口飲み、「おいしいです！」と微笑む。そしてケーキスタンドに並べられたケーキも楽しみ始めた。

リオンが楽しい話を振ってくれるため、会話にはちっとも困らない。お茶は誰かと飲むからおいしいのだと杏菜は思いながら紅茶に口をつける。しかしーーー。

「すみません。急に眠くなって……」

突然杏菜を強烈な眠気が襲い、そのまま杏菜は意識を手放した。



鳥のさえずりで杏菜はゆっくりと目を開けた。体を起こすと、そこは木で作られた見覚えのない部屋だった。

「えっ？ここは……」

杏菜が戸惑っていると、ギイッと音を立ててドアが開く。そしてリオンが「起きたんだね！」と嬉しそうな顔をしながら杏菜に近づいてきた。杏菜は壁際にゆっくり後ずさる。