身ごもったら、エリート外科医の溺愛が始まりました
「バッタリって、偶然ってことでしょ? 沖縄で会った人と、東京で?」
「うん、新宿の駅で。こっちに、戻ってきたんだって」
そう言って、自分の出かけた本来の目的を思い出す。
「あ、ごめん……ケーキとか買いに行ったのに、何も買ってこれなかった」
「そんなこといいから。いるなら今からでも買いにいけるし。それより、それで? 会って話したんでしょ?」
「うん。会って、このお腹見たら、驚いてたみたい。だから、あなたの子じゃないですって、はっきり言った。元カレの子だって、嘘ついて……」
「えっ!? なんでそんなこと言ってるのよ!」
お姉ちゃんの声が一段と大きくなる。
お姉ちゃんは私がそんな嘘をつくとは思ってなかったのかもしれない。
「これ以上、迷惑かけたくなかったから」
「え……?」
「私なんかが子どもを身籠っていい相手じゃないから、きっと……」
そう言うと、また涙が込み上げてくる。
お姉ちゃんは「佑杏……」と、私の手を握った。
「それに、もう決めたから。生まれた時から父親のいない子にさせちゃうのは可哀想なことだけど、その分ちゃんと愛情注いで、さみしくないように育てていくって、決めたから」
自分に言い聞かせるように言葉を並べながらも、浮かんだ涙がぼろぼろと流れ落ちていく。