身ごもったら、エリート外科医の溺愛が始まりました
今度こそ捕まえる Side Haruto
捕まえても捕まえても、するっと腕をすり抜けていってしまう幻のように。
静かに、そこにいたという痕跡も残さずに、ふわっと夢だったかのように消えてしまう。
貴晴から解放されて急いで自宅に戻ると、佑杏の姿はなくなっていた。
体のことも心配だから、ちゃんと自宅まで送り届けたかった。
念を押して出かけたけど、初めから遠慮していたし、もしかしたら勝手に帰ってしまうかもしれないということはほんの少しだけ頭を過った。
「成海、どうした、顔が死んでんぞ」
コーヒーのカップを片手に向かいのデスクについた先輩の御手洗が、俺の顔を見てにやりと笑う。
例の、避妊具を配ってた人だ。
彼も東北のほうに出向していたはずだが、俺が戻る少し前に先に出向を終えていたらしい。
そもそも、あんたが渡してきたやつで俺がどんだけ振り回されてるかわかってんのか……。
責任転嫁は良くないとわかっているけれど、つい心の中で毒づく。
でも、それも俺の思い過ごし……だったのか……?