身ごもったら、エリート外科医の溺愛が始まりました


 沖縄ならともかく、東京都心の人ごみの中で、佑杏に再会したことは信じられなかった。

 あの瞬間は、〝巡り合う運命〟なんて乙女チックな言葉が頭の中に浮かんだほど。

 同時に、彼女の膨らんだお腹を見て、自分の中の時が止まったようだった。

 疑うこともなく、自分の子だと思った。

 だから彼女を連れて帰ったし、順番が違ってしまったことを謝り改めて真剣交際を申し込もうと思っていた。

 だけど、彼女は言った。


『このお腹の子は、元カレだと言った、その人の子です』


 頭を固い何かでぶん殴られたような衝撃だった。

 まさか、そんなわけ。

 そんな思いが胸に充満したけれど、そう言われてしまえば情けないことに何をどう言ったらいいのかわからなくなっていた。

 沖縄にくる前日に別れたという彼氏。

 身籠ったのはその男の子だと言われた俺に、もう口を挟む権利はないのだと思ってしまった。

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