身ごもったら、エリート外科医の溺愛が始まりました
「ちょっと、寝不足で」
「珍しいな。いつもきりっとしてるお前が。さては、女がらみだな?」
御手洗はどうも俺をそういう方面と結び付けたがる人だが、今回ばかりは外れてもない。
でも、余計なことを話すと面倒な展開になることは目に見えてわかるから、「さぁ、どうでしょうね」と上手いこと交わして席を立ち上がった。
医局を出、その足で思い立ったように自分の受け持つ呼吸器外科のナースステーションに向かう。
朝の申し送りが終わった時刻を過ぎると、看護師たちは各々病室を回ったり自分の仕事を始めている。
空いているパソコンの前を陣取り、電子カルテを立ち上げ、自分のコードを入力する。
昨日、佑杏がうちで薬を飲んだ時、取り出した薬の紙袋にあった名前が、このすぐそばにある調剤薬局の名前だった。
うちの病院では主に薬剤部で処方をしてもらっていく患者が大半を占めているけれど、処方が混み合う場合などは近隣の調剤薬局を利用する患者も少なくはない。
もしかしたら、うちにかかっているのかもしれないなんて望みの薄い期待をしながら、〝宇佐美佑杏〟と院内カルテを検索する。
すると、その名前で一件のヒットがあった。