身ごもったら、エリート外科医の溺愛が始まりました
「私は何もお話することはできません。伺っておいて申し訳ありませんが、業務もありますのでこれで失礼します」
引き留める間もなく、佑華さんは産科病棟へと足早に戻っていく。
その姿を見送りながら、やはり昨日の話は全て作り話だったのではという考えが膨らんでいった。
でも、どうしてそんなことを……?
例えひとりで産み育てようと決意して過ごしていたとしても、昨日の再会で嘘をつく必要なんてどこにもなかったはずだ。
また会いたいと、もっと一緒の時間を過ごしたいと思ってきた佑杏との再会。
彼女にはきっと自分の子が宿っていて、産み育てようとひとり大事に守ってきてくれたこと。
捕まえようとしても腕からすり抜けていってしまう彼女を、今度こそこの手に捕まえ、そしてしっかりと守っていきたい。
そんな想いを強く抱きながら静かに踵を返した。