身ごもったら、エリート外科医の溺愛が始まりました


 一階に向かう誰も乗っていないエレベーターの中、晴斗さんの空いている手が私の手を取る。

 指を交互に絡めて握られると、あの沖縄で手を繋いだことがふっと蘇った。

 あの時も驚きと緊張で相当ドキドキしたけれど、久しぶりの今だって心拍数が上がっていく。

 彼の子を身籠っていてもそれは関係なくて、改めてこうして手を繋げることに胸がきゅんとしていた。


「一緒に選んだ新しい住まいは、ここから車で十分くらいだった。佑杏もすぐ通院できるし、俺も通勤しやすい」


 車に乗り込んだ晴斗さんは、お腹の大きい私のシートベルトを「こうしたほうがいい」とシートを少し倒しベルトがお腹の負担にならないように調整してくれる。


「ありがとうございます。そうなんですね、すごく楽しみです」


 住むことに決まったのは、ファミリーに人気の低層タイプの高級マンション。

 景色のいいタワーマンションも候補に入っていたけれど、これから子どもが生まれることを考えると、バルコニーが広く緑も多い環境がいいのではないかと将来を見据えてふたりで選んだ。

 資料だけで見ても、マンション自体が美しい公園に包まれているような造りで、こんな素敵な住まいが都心にもあるのかと感激したくらいだ。

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