身ごもったら、エリート外科医の溺愛が始まりました
「でも、未だに信じられないな」
「え……?」
「こうして佑杏を助手席に乗せて、これから一緒に住むマンションに向かってるなんて」
思わず晴斗さんの運転する横顔を見てしまう。
晴斗さんもそんなことを思っているの?と、今まさに自分がそんなことを思っていたところで驚いたのだ。
「私も、同じこと思ってました。実感がないというか、こうしていること自体、夢なんじゃないかって」
そう言ってみると、晴斗さんは「夢って」とくすっと笑う。
「昨日の夜、眠って朝起きたら、晴斗さんが迎えに来てくれることなんて全部夢だった……なんてなったらどうしようとか、ちょっと子どもみたいな心配なんかしてみたりして」
自分に都合のいい夢を見ている。
そんなことをちらりと思ったことは事実だった。
「夢なんかじゃないから」
膝の上にある手を、晴斗さんの大きな手が掴む。
しっかりと伝わる体温が、言葉通りこれは現実だと証明してくれているようだった。
「はい」
その手を私のほうからも両手で包み込む。
ここに、本当に晴斗さんがいる。
手元で重なる手を見て、胸がいっぱいになった。