身ごもったら、エリート外科医の溺愛が始まりました


「ちょっと動きすぎじゃないか?」


 寒い中窓を開け放ち、バルコニーを覗く私の元に晴斗さんがやってくる。

 振り返ろうとすると、背後から腕を回して抱き締められた。

 近づいた距離に鼓動が跳ねる。

 背の高い晴斗さんが、包み込むようにして私のこめかみにそっと口付けた。


「やっと佑杏を独り占めできる」


 そんな囁きを受けて、顔が熱を持つ。


「すみません、つい、はしゃいじゃいました」

「はしゃぐのは構わないけど、退院した日なんだから安静にしないとな」


 腕を解き、リビングのソファへと連れていかれる。

 ナチュラルテイストな木枠の大きなソファは、硬さもちょうどよく座り心地が抜群だった。

 すでに住めるように用意された部屋は、インテリアコーディネート専門のプロにお願いして作り上げてもらったと聞いた。

 家族構成やライフスタイル、好みのテイストや雰囲気を聞いて居住空間をトータルコーディネートする。

 そういうところにお願いして住まいを作るということすら、私には無縁で知らない世界だった。

 引っ越しをしたら自分で家具家電を出向いて用意し、住まいを完成させるという感覚しかない。

 たぶん、一般庶民はほとんどがそうだと思う。

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