身ごもったら、エリート外科医の溺愛が始まりました
「佑杏の性格上、切迫早産に陥りやすいタイプなのかもって言ってた。よく動いてるマグロみたいだって」
「マグロ!?」
「ほら、マグロってずっと泳いでて、止まると死んじゃうって言うじゃん」
お姉ちゃん、だからって、マグロになんか例えなくても……。
「褒め言葉だと思うけどな」
「えっ、そうですか?」
「働き者って意味で例えたんだろうから。だけど、今はそれやったらダメだから。絶対に無理はしないって約束。わかった?」
「わかった?」と念を押されるように訊かれ、「わかりました」と答えると、晴斗さんは私に寄り添い肩を抱き寄せた。
「安静にして体調が良ければ、出産前に少しでもふたりだけの時間を作りたいって思ってる」
「え……ふたりだけの時間?」
視線を上げて晴斗さんを見つめると、晴斗さんは穏やかに微笑んでくれる。
「子どもが生まれたら、なかなかふたりだけの時間は自由に取れないから、その前に佑杏を独り占めしたい」
晴斗さんの口から〝独り占めしたい〟なんて破壊力のある言葉が出てきて、私の鼓動は忙しなくなり続ける。
「私も……晴斗さんとふたりきりで過ごしたいです、今のうちに」
高鳴る鼓動の中、自分の気持ちを素直に口に出す。
晴斗さんはふっと吐息混じりに笑い、私の大きな腹部にそっと手のひらをのせた。