身ごもったら、エリート外科医の溺愛が始まりました
「ママとパパの声が聞こえてるのか?」
晴斗さんがそんな風にお腹に話しかけて、今更どきっとする。
そうか、私がママで、晴斗さんがパパ……。
お腹は日増しに大きくなっているのに、気持ちや自覚が追い付いていっていない。
あと二か月もすれば、もうこの子も産まれてきてるんだ……。
「どうした?」
「……。あ、いえ! パパママなんだなって、今頃実感したというか」
「ああ、確かに。それは俺も同じ。俺が父親かって思う」
私だけではなく、晴斗さんも同じような心境だったようで、良かったとホッとする。
この手にお腹の中の子を抱いてみないと、本当の実感は生まれないような気もしていた。
「佑杏、夜は何が食べたい? 病院食でしばらく味気なかっただろ?」
「あ……そうですね、何か作りましょうか。その前に買い物に行ってこないと」
「だから、そういうのは俺が全部やるから」
「えっ、でも」
晴斗さんは私の肩に手を置き、「休んでる」と言ってひとり立ち上がる。
「佑杏は、休んでることが仕事だから」
そう言って、「着替えてくるから、食べたいもの考えておいて」と私の元から離れていった。