身ごもったら、エリート外科医の溺愛が始まりました
軽やかに滑らかに響き渡る旋律は、最近巷で話題のラブソング。
広場から響き渡る晴斗さんのピアノ演奏を聴きつけた人たちが吸い寄せられるように続々と集まってくる。
それはあっという間に晴斗さんの演奏するグランドピアノの周囲を取り囲んでいた。
初めて晴斗さんの演奏を聴いた時、プロの方が弾いているとばかり思っていた。
きっと、こうやって集まってきた人たちの中には、私みたいに思っている人もいるはずだ。
観客は圧倒的に女性が多く、スマホを構えて何やら動画撮影している様子の人もいる。
演奏があまりに上手くて人だかりとなり、私のいる位置からはとうとう晴斗さんの姿が見えなくなってしまった。
一曲を演奏し終えると、たちまち拍手が湧き起こる。
その拍手が止むより早く晴斗さんが戻ってきて、「ごめん、お待たせ」と謝った。
集まった人々と同じように、晴斗さんに向かってパチパチと拍手を贈る。
「久しぶりに聴きましたけど、やっぱり晴斗さんのピアノ大好きです」
お腹へと触れ、「パパのピアノ聞こえた?」と思わず赤ちゃんへ話しかける。
自分で言っておいて恥ずかしくなり、顔に熱が集まるのを感じた。
「それなら、もっと弾く。佑杏と、この子のためだけに」
まだ座ったままの私の耳元に背を屈めて近づいた晴斗さんが囁く。
私の手を取り荷物を持つと、「行くか」と立ち上がらせてくれた。