身ごもったら、エリート外科医の溺愛が始まりました
目を向けると、向こうで手を上げている男性の姿が見える。
晴斗さんと同じくすらりとした長身で、白髪混じりの黒髪は短髪で立ち上げている。
この人の子どもが晴斗さんか、と納得のいく顔面偏差値の高さで、渋くて素敵なお父様の登場に私は内心震え上がる。
「悪い、待たせて。早かったな」
「待ってない。今少し前に来たばかりだ」
そう晴斗さんに言ったお父様の目がとなりの私に向けられて、慌てて深めに頭を下げる。
「初めまして、宇佐美佑杏と申します」
「おー、会いたかったよ、佑杏さん。晴斗の父の、成海廉介と申します」
心配と不安で高鳴る鼓動の中、晴斗さんのお父様は気さくに挨拶を交わしてくれる。
会いたかったと言ってもらえるとは思ってもみなかったことで、ほんの少しだけホッと肩の荷が下りた気分だった。
予約の中華レストランへと向かいながら、晴斗さんが「な、言った通りだろ?」と耳打ちしてくる。
確かに、見るからに怖そうで厳格なお父様という妄想からは解き放たれた。
だけど、気が抜けたわけではない。
レストランに入ると、個室の席へと案内される。
えんじ色のテーブルカバーのかかった円卓の席には、晴斗さんのとなりに私が掛け、ふたりに対面するようにお父様が掛ける。
すぐに黒服のスタッフがコースの支度を始め、それが済むと個室には三人だけになった。