身ごもったら、エリート外科医の溺愛が始まりました
「俺は運転があるから飲まないけど、親父は?」
「ああ、タクシーで来たが病院に戻るかもしれないんだ」
親子の会話を黙って聴きながらも笑顔は忘れない。
ふたりの会話を聞いていると、私の想像していたお堅い感じではない様子。
フランクなやり取りをしているし、仲が良さそうだ。
「佑杏さんも飲めないわけだし、ちょうどいいだろう」
お父様はそう言って私に笑いかけてくれる。
前菜の盛り合わせが運ばれてくると、スタッフが立ち去っていったタイミングで晴斗さんが「今日は時間作ってくれてありがとう」とお父様に切り出す。
「彼女と、一緒になることに決めたから」
いきなり本題に入ってしまい、手に取ったお箸をそのまま元の位置に戻していた。
一定の速さで鳴っていた鼓動が速度を増していく。
お父様が「そうか」と言って、晴斗さんから私に視線を移した。
「佑杏さん、はじめにひとつ、父親の私から謝らせてほしい」
「はい……」
「順序が間違うようなことになってしまい、申し訳ない。心身ともに大変な時期を過ごされたと思う」