身ごもったら、エリート外科医の溺愛が始まりました


「え?」


 目の前の晴斗さんは、どこか意地悪な笑みを浮かべてじっと私を見つめる。


「そんなわけないです! 全部好きです」


 そう答えると、フッと満足そうに笑って頬にかかる私の髪を耳にかけた。


「不意打ちで可愛いこと言うんだから」


 晴斗さんの顔がもっと近づいて、唇が奪われる。


「っ……ん」


 すぐに舌先が唇を割ってくると、自然と吐息が漏れた。

 誘われるようにして舌を搦め取られ、口づけは次第に深まっていく。

 晴斗さんはチュッと軽やかな音を立てて唇を離した。


「ごめん……今は我慢ってわかってるけど、佑杏が目の前にいるとつい触れたくなっちゃって」


 そんな風に言われると、ますます鼓動の高鳴りが増してしまう。

 上にしているほうの腕を伸ばして晴斗さんに巻き付け、ぎゅっとしがみつくように抱き付いた。


「こんな、お腹が大きいのに、そんな風に言ってもらえるのは嬉しいです」


 妊娠は喜ばしいこと。

 だけどそれと同時に、変化する心や体型に自分自身戸惑いもある。

 ママとしての自分が大きくなり、女性としての自分が薄れていってしまうのではないか、と……。

 出産後の体の変化も今から心配だったりする。


「佑杏は佑杏だろ。何も変わらない」

「晴斗さん……」


 どこか不安そうな声で名前を口にした私を、晴斗さんは腕の中に抱き締めてくれる。

 その体温が心地よくて、いつの間にか眠りの世界へと旅立っていった。

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