身ごもったら、エリート外科医の溺愛が始まりました
「晴斗さん、眠くないですか?」
ベッドサイドに置かれた椅子に掛ける晴斗さんにそう訊くと、「全然」と笑みと共に一言返ってくる。
「大事な佑杏がいよいよ俺たちの子を産んでくれるかもしれないって時に、眠気なんて吹っ飛ぶだろ」
「そういうもんですか?」
「そういうもんだろ。頑張ってくれる佑杏をそばで支えたいから」
ひとりで産み育てようとしていた頃、自分に可能な想像で出産をひとり乗り切る覚悟をしていた。
でも、今実際にその時を前にして、恐怖と不安で心が押しつぶされそうになっている。
その先にこのお腹の子と対面できるという最高の喜びが待っていることは頭ではわかっている。
だけど、それがわかっていても出産という未知の体験へ慄く気持ちが勝ってしまうのだ。
そんな状況の中で、こうして晴斗さんがそばで手を握ってくれ、「支えたい」と言ってくれることがどんなに心強いことか。
今になって思い知る。
「晴斗さんがいてくれて良かった」
心にある想いを口にすると、晴斗さんは穏やかな笑みを見せる。
そして、握った手にぎゅっと力を込めた。